iFi audioのフォノイコライザー、「ZEN Phono 3」使用レビュー

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iFi audioのフォノイコライザー、ZEN Phono 3を予約して発売日(2024年4月26日)に入手したので使用レビューを書いてみます。
※価格は本記事執筆時点のものです。

フォノイコライザーとは大雑把に解説するとレコードに刻まれたとても小さな信号を増幅する機材です。略してフォノイコと言ったり、フォノアンプとも呼ばれます。
更に詳しく知りたい方はDenon official Blog 超初心者のための「フォノイコライザーって何?」が参考になると思います。

結論:5万以下でこの性能は買い

いつものように先に結論です。
5万以下でこの性能は間違いなく買いです。

物価高と円安が加速する昨今、各オーディオメーカーも「価格改定のお知らせ」が多いのは御存知の通り。その内容は99%が値上げと言っても過言ではありません。
円高になり得る材料が日本に全く見当たらない以上、円安は続くはずです。
筆者はZEN Phono 3も近いうちに値上げされる可能性が高いと思っています。
買えるうちに買っておくのが賢い選択です。

フォノイコライザーに関しては筆者はこれまでにAT-PEQ20を改造(フォノイコライザー「AT-PEQ20」を改造してみた )したり、SV-EQ1616Dを四苦八苦しながら自作(SUNVALLEYの真空管フォノイコライザーアンプキット「SV-EQ1616D」製作レビュー(その1) )しましたが、ZEN Phono 3が出た今はもう悩む必要はないでしょう。

ZEN Phono 3は5万以下で買える本格的フォノイコライザー

ZEN Phono 3はiFi audioが展開する比較的安価なZENシリーズのフォノイコライザー。

ZEN Phono 3を愛曲楽器で購入

定価は¥46,200でしたが、Yahoo!ショッピングの愛曲楽器で3%分クーポンと、「買う!買う!サンデー」ほかのキャンペーンを組み合わせて15%のPayPayポイント還元、実質¥38,693で購入出来ました。
※筆者はワイモバイルユーザーのためLYPプレミアム会員割引(2%)も適用されています。
※3%クーポンは税込価格に、その他の還元ポイントは税別価格に適用されるため単純に18%の計算では差異が生じます。

新旧モデル比較

ZEN Phonoシリーズのナンバリング

(画像はiFi audioより引用後に一部加工)

3というからには2もあったのだろうか?と調べてみたら、2はないようです。
ZEN Phonoが1、ZEN Air Phonoが2という位置付けのようですね。

ここでZEN Phono、ZEN Air Phono、ZEN Phono 3の3機種をざっくり比較してみましょう。

共通する機能① MM/MC対応

実売約1.9万のZEN Air PhonoでもMM/MC対応。
ZEN Air Phonoは2段階のゲイン設定スイッチで40〜64dB、ZEN PhonoとZEN Phono3は4段階で36〜72dBまで設定が可能。

MM:Moving Magnetの略。針の動きでマグネットが振動し、ボールピースに巻かれたコイルに出力電圧を発生させる。
MC:Moving Coilの略。マグネットによって発生した磁界中を、針に直結したコイルが動くことで出力電圧を得る。(画像、説明文ともPhile-webより引用)

共通する機能② AIサブソニックフィルター

AIサブソニックフィルターは反ったレコードを再生する際の影響を取り除く機能で、同社の商品説明には以下のようにあります。

反りによるノイズだけにフィルターをかけて、楽曲にはまったく影響を与えず、グループ・ディレイ(群遅延)を加えることもありません。

ZEN Phono 3のみの機能 - 負荷抵抗・負荷容量の可変設定

ZEN Phono 3はゲインと入力インピーダンスが4段階設定可能

ZEN Phono 3は前述の通りゲイン設定4段階が出来ると同時に、入力インピーダンスも4段階(200pF, 100Ω, 400Ω, 1kΩ)の設定が可能。
これだけあると、どんな低出力カートリッジでも心配は要らなさそうです。

開梱の儀

ZEN Phono 3開梱の様子

いよいよ開梱です。 パッケージは紙製スリップケースと段ボールで簡素にまとめられ、無駄な梱包材もなく極めてコンパクト。

筐体デザイン

ZEN Phono 3の筐体デザイン

筐体はZENシリーズに共通したサイドにアールのついたデザイン。
ゴールドでスプリットされた前面パネルのデザインは好みが分かれそうです。

ZEN Phono 3は片手に乗るサイズ

購入前にサイズも確認していましたが、実機は想像以上に小さく高級感があります。

ACアダプター

ZEN Phono 3のACアダプター

オーディオファイルとして気になるのはACアダプター。 サイズはW:40xH:62xD:50mm(突起部含む)で、小さく、軽いのは良いのですが、どうしても「ACアダプターかぁ」と思ってしまいます。
ちなみに商品説明ページには以下のようにあります。

ZEN Phono 3はハイテクのクリーンな電源を内蔵していますが、それは電源回路専用の隔離された「アイランド」に配置され、ボード上の他の部分からは切り離された状態になっています。 この電源の独立化が、アナログ・ステージのノイズによる汚染を軽減し、オーディオだけが増幅されることを確保し、ノイズフロアを囁くほど静かな状態に保つのです。

デフォルトでも十分良さそうな表記ではありますが、そのすぐ下に同社製ノイズキャンセリングACアダプター「iPower II」への誘いが書かれています(笑)

iFiのiPower IIは、超静音、超クリーンなオーディオファイル・グレードのACアダプターです。「アクティブ・ノイズ・キャンセレーションII」テクノロジーを装備しているので、EMI/RFIノイズをすべてキャンセルします。ノイズとざらつきに対して無力であると感じることは二度となくなるのです。

まだ「伸びしろはある」ということでしょうね。

使用レビュー

試聴時の環境は以下の通りです。

  • プリアンプ:McIntosh C26
  • パワーアンプ:McIntosh MC30x2
  • スピーカー:Stephens Trusonic 206 AX
  • ターンテーブル:Thorens TD-520
  • フォノイコライザー:iFi audio ZEN Phono 3(デフォルトのACアダプターを使用)

普段はこれにSUNVALLEY SV-EQ1616D(V1&V2:Gold Lion ECC83×2、V3:Gold Lion ECC82、V4:PSVANE WE274B)と、LUNDAHL 1681を2台使って作った自作MCトランスを繋いでレコードを再生しています。

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Denon DLシリーズでの試聴

ZEN Phono 3をDenon DLシリーズで試聴

Keith Jarrett “The Köln Concert” を下記の4通りで試聴してみました。
MCトランスは接続せず、ZEN Phono 3の設定は共通にしています。

Denon DL-110
  • トーンアーム:SME 3009 S2 Imp
  • 針圧:2g
  • インサイドフォース:2g
  • ZEN Phono 3設定:ゲイン MC V-LOW / インピーダンス 100Ω
  • MCトランス:なし
Denon DL-103
  • トーンアーム:SME 3012R
  • 針圧:2.5g
  • インサイドフォース:2.5g
  • ZEN Phono 3設定:ゲイン MC V-LOW / インピーダンス 100Ω
  • MCトランス:なし
Denon DL-103R
  • トーンアーム:SME 3012R
  • 針圧:2.5g
  • インサイドフォース:2.5g
  • ZEN Phono 3設定:ゲイン MC V-LOW / インピーダンス 100Ω
  • MCトランス:なし
Denon DL-102
  • トーンアーム:SME 3012R
  • 針圧:2.5g
  • インサイドフォース:2.5g
  • ZEN Phono 3設定:ゲイン MC V-LOW / インピーダンス 100Ω
  • MCトランス:なし

まず最初に感じたのは「見通しの良さ」。クリア、明瞭感を強く感じました。
いずれの環境においてもZEN Phono 3は、これまで筆者が使用してきた機材に匹敵します。
前述のLUNDAHL 1681を2台使って作った自作MCトランスだけでZEN Phono 3が買える金額なんですが、この点だけ見てもコスパは非常に優れていると言えます。

また、ゲインと入力インピーダンスがそれぞれ4種類選べるため、(本来の目的ではありませんが)この組み合わせによって好みの出音を作ることも出来ます。
インピーダンスが豊富なためカートリッジを取っ替え引っ替え試して楽しめるのもポイントですね。

上記4機種のカートリッジで印象に残ったのがDL-102とDL-103R。
モノラルカートリッジのDL-102は周波数特性が狭く(50Hz~10kHz)、高域が出ないため沈んだ印象になりがちなのですがそれがない。
ZEN Phono 3で再生するDL-102は描写力や彫りの深さも非常に優れていて、「数字だけでは判断出来ないものだな」と強く思いました。

DL-103Rは普段聞いていたSV-EQ1616Dと自作MCトランスの組み合わせで聞く時とは艷やかさが増していると感じました。
DL-103RはDL-103と同等の周波数特性(20Hz~45kHz)ですが、DL-103よりもソフトでシルキーなタッチが際立ち、見事に表現されていました。

デフォルトのACアダプターでも十分いい

懸念材料だったデフォルトのACアダプターでも、その評価は上述の通り。
「このままでもいい」とすら思えるほどの完成度でした。
そうは言っても、やっぱりデフォルトのACアダプターは嫌だ!と言う方は同社製の超ローノイズアダプター、iPower II(5V)の導入を検討してみるのも良いでしょう。

ちなみにノイズフィルターで真っ先に浮かぶFX-AUDIO-のDC電源ノイズクリーナー・ノイズフィルター、Petit Susieは「1A未満のACアダプターでのご使用はお避けください」とあるため、フォノイコライザーのような消費電力の低い機材には使えません。

ZEN Phono 3に弱点はあるのか?

ベタ褒めしてきたZEN Phono 3に弱点はあるのでしょうか?

独特の曲面とフロントパネル

ZEN Phono 3の曲面デザインは好みが分かれる?

音質には関係ありませんが、筐体は独特の曲面、フロントパネルもゴールドでふちどりされたデザインは好みが分かれるところでしょう。
筆者もこのデザインは正直苦手です(笑)

ACアダプター

前述の通り、ACアダプターは真っ先に手を加えることが出来るポイントです。

インシュレーター

ZEN Phono 3の足はシリコンゴムがついているだけ

見落としがちなのがインシュレーターです。
ZEN Phono 3を裏返してみるとチープなシリコン製と思われる小さなゴム足が4つついているだけ。
これは是非ともきちんとしたインシュレーターをあてがいたいところです。

ZEN Phono 3にISO Acoustics ISO-PUCK miniをあてがってみたところ

以前、レビュー記事(コスパ最強のインシュレーター「ISO Acoustics ISO-PUCK mini」使用レビュー )を書いたISO Acoustics ISO-PUCK miniを3または4つ使うと丁度よいかと思います。

ZEN Phono 3にAET VFE-4010Uをあてがってみたところ

インシュレーターのサイズも極力小さくしたい方はAETのVFE-4010Uも良さそうです。

と、まあ無理やりケチをつけようとしても、ZEN Phono 3には弱点や欠点がほとんどないと言えます。

まとめ:ZEN Phono 3はアナログ初心者からマニアにも強くおすすめ出来る

ZEN Phono 3はアナログ初心者からマニアにも強くおすすめ出来るフォノイコライザーであることは間違いありません。
特にアナログ初心者にはZEN Phono 3を使って頂きたいですね。間違いなく世界が変わります。
マニアの方は筆者のようにカートリッジをあれこれ試す楽しみをもう一度味わえることでしょう。