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今回はMcIntoshのウッドケースをリペアしてみました。
筆者が愛用するMcIntosh C26には別売りのウッドケースがあり、数年前にオークションで入手していました。
ただ、アンプと同じく、このウッドケースも製造から約半世紀以上経っていて、あちこちに傷がみられ、いつか直してやろうと思っていたのです。
結論:仕上がりには満足。ただし手間と時間がかかりすぎる
仕上がりにはとても満足していますが、この作業は非常に手間と時間がかかりました。
特に乾燥させる時間が長く、合計約1週間(作業は1月中旬、気温は0〜11度、期間中の降雨・降雪なし)を要したため、決してオススメできるものではありません。
本記事を真似る方は多くはないでしょうが、やる場合は根気と覚悟が相当に必要です。
ただ、この手法はスピーカーエンクロージャーのリペアにも利用できるので、ビンテージスピーカーが好きで自分で直したい方には役立つと思います。
状態の確認
さて、こちらがそのウッドケースです。
背面を見るとパーティクルボードに突板仕上げであることが分かります。
正面、上面は特に問題ありませんが、両サイドに何かにぶつかったまま強く擦れたせいで長く大きく深い傷が見えます。
所々、酷くえぐれている箇所もあります。
表面はウレタンニスらしき塗料で塗装されていて、液垂れ状態のまま硬化した箇所もわずかに見られました。
オークション落札後に少し溶剤の匂いが残っていたため、おそらく前オーナーが出品前に施したものと思われます。
ウレタンニスの微光沢が苦手なのも今回のリペアのきっかけの一つです。
パーティクルボード:パーティクルボードとは、木材のチップを加熱圧縮した板のことです。パーティクルとは英語で「particle」といい、「小片・細片・粒子」という意味です。「パーチクルボード」「削片板」「チップボード」とも呼ばれています。(建材ダイジェスト)
方針と作業の流れを決める
大まかな方針として「完璧は目指さない」ことにしました。
両サイドの深い傷を完全に消そうと思うと、相当に表面を削る必要があり、素人仕事では下地が露出して更にひどい傷になることは目に見えています。
そのため、完璧に傷を消すことではなく現状より良くなればOKとしました。
作業の流れは以下のようにしました。
- マスキング
- ウッドパテで傷埋め・乾燥(24時間)
- サンディング(サンドペーパー #150 → #240 → #320)
- オイル塗装(1回目)・拭き取り・乾燥(1時間)
- オイル塗装(2回目)・水研ぎ(耐水ペーパー #240)・拭き取り・乾燥(24時間)
- オイル塗装(3回目)・水研ぎ(耐水ペーパー #240)・拭き取り・乾燥(24時間)
- オイル塗装(4回目)・水研ぎ(耐水ペーパー #320)・拭き取り・乾燥(24時間)
- オイル塗装(5回目)・水研ぎ(スチールウール #000)・拭き取り・乾燥(24時間)
水研ぎを#320までにしたのはあまり艶を出したくなかったからです。
逆に艶を出したい方は水研ぎ時の耐水ペーパーを#240→ #320 → #400 → #600のように上げていくと良いでしょう。(番手はあまり飛ばさない方が上手く仕上がります)
ただ、しっとり感が欲しいためのオイルステイン仕上げなので、艶が欲しいならニス仕上げの方が合うと思います。
水研ぎ(みずとぎ):水研ぎとは、塗装工事の際、塗面を平滑にするために水をつけながら研磨することである。(建設・設備求人データベース)「ウェット研磨」や「オイル研ぎ(オイルを使った水研ぎ)」とも呼ばれる。
必要なもの
今回の作業で使用したものは以下の通りです。
- マスキングテープ(太めと細めの2種)
- アートナイフ
- 定規
- ウッドパテ(ウォールナットとダークウォールナット)
- ワトコオイル(ダークウォルナットとエボニー)
- 塗装用の刷毛
- ヤスリホルダーかハンドサンダー
- サンドペーパー(#150、#240、#320)
- 耐水ペーパー(#240、#320)
- スチールウール(#000)
- 新聞紙
- ウェス用の布(目の詰まった使い古しの綿100%のTシャツや手拭い)
- 軍手またはゴム手袋
マスキングする
マスキングテープの端を処理する
テープカッターでカットしたマスキングテープの縁はギザギザです。
このまま貼り付けてパテを塗ったりや塗装してしまうとギザギザの痕がついてしまいます。
これを避けるためにアートナイフと定規を使って直線に揃えるのです。
マスキングテープは太いものと1〜3mm程度の細いものの2種があると便利です。太いものはフチなど広範囲に及ぶ箇所に、細いものは主に狭い箇所用に使い分けます。
マスキングテープを貼る
縁やパテ埋めする箇所の周りにマスキングテープでマスキングをしておきます。
こうすることで不要な箇所に塗料やパテが付着することを防ぎます。
ウッドパテで傷を埋める
ウッドパテの調色
ウッドパテはハウスボックスのNEWカラーパテを使用しました。
このパテは乾燥後はヤスリがけや釘打ちが出来、さらに混ぜ合わせて調色が可能。
筆者はダークウォールナットとウォールナットを6:4程度で混ぜて調色しました。
ウッドパテを塗る
酷くえぐれている箇所やチッピング箇所をウッドパテで傷を埋めます。
ここでもすべての傷を埋めようとすると仕上がりが不自然になることが予想されたため、酷い箇所のみにしました。
サンドペーパーでサンディングする
ウッドパテ乾燥後、パテ周辺のマスキングテープのみを剥がして、ウッドケースをサンドペーパーでサンディングします。
※サンディングも塗装も水研ぎも全て木目の流れに沿って行います。
この工程は以下を目的としています。
- 素地を平らにする
- 不要なウッドパテを削り落とす
- ウレタンニスを削り落として塗料が乗るようにする
サンディングは必ず番手の若い(目の荒い)順に行います。
筆者は150 → 240 → 320の順に作業を行いました。
サンディング後はウェスで水拭きして木くずを取り除きつつ、傷の残り具合やウッドパテで埋めた箇所を確認します。
傷をもう少し目立たなくしたい、パテをもう少し削りたい場合は再度サンディングします。
サンドペーパーの番手は若いほど荒いですが、スチールウールの番手は異なります。
荒い順に並べると以下のようになります。
#5 > #4 > #3 > #2 > #1 > #0 > #00 > #000 > #0000
家具や木工品に使用するのは主に#00〜#0000です。
サンディングはサンドペーパーを角材や木片に巻きつけて行うのが基本ですが、ヤスリホルダーやハンドサンダーがあるとかなり便利ですよ。
ワトコオイルで塗装する
塗装はDIYerに絶大な人気を誇るワトコオイルにしました。
ワトコオイルはオイルの名称からは想像がつかないほどサラサラの液体で、亜麻仁油の独特な香りも特徴的。ウレタンニスのような微光沢ではなく、しっとりとした仕上がりも大好きです。
一度目の塗装後、30分程度放置して浸透しきれない塗料をウェスで拭き取り、1時間乾かします。
注意:
ワトコオイルは塗装や乾燥時に揮発します。揮発したオイルは作業者に付着したり周辺を漂うため、別室であってもガスファンヒーターや石油ストーブを使用していると、これと混ざって不完全燃焼のような匂いが発生します。気になる方はかなり離れた場所で塗装・乾燥させるのがいいでしょう。
なお、当たり前ですが塗装・乾燥時は火気厳禁です。
水研ぎ(ウェット研磨)する
オイルを一度目の塗布量の1/3〜1/4程度で軽く塗布(2回目)します。
塗布後、#240の耐水ペーパーで水研ぎ(ウェット研磨)し、表面に残った塗料を拭き取り、乾燥(24時間)させます。
水研ぎの際は、消しゴムカスのような研ぎカスが出るまでサンディングします。
水研ぎで出た木くずを道管(樹木内の水分を運ぶ水道管のようなもの)に詰め、オイルの乾燥によって固めることで独特のしっとり感が生まれるのです。
再度オイルを塗布(3回目)、#240の耐水ペーパーで水研ぎ、拭き取り、乾燥させます。
この時点で少し色が薄く感じたため、3回目の塗装からワトコオイルの色をエボニーに変更しました。(筆者は途中から違う色に変更しましたが、ワトコオイルは混ぜ合わせて調色も出来ます)
再度オイルを塗布(4回目)、#320の耐水ペーパーで水研ぎ、拭き取り、乾燥。
再度オイルを塗布(5回目)、#000のスチールウールで水研ぎ、拭き取り、乾燥させて仕上げです。
オイル仕上げ特有のしっとり感がものすごくいい感じで出ています。
※乾燥後もワトコオイルの匂いが残っているため、そのまま3日程度は放置しておくほうが良いでしょう。
完成
最後に縁に貼っていたマスキングテープを剥がして完成です。
途中でエボニーに変えたこともあり、完成後のウッドケースは施工前より一段濃い色合い。
オイル仕上げによる渋さがたまりません。
両サイドの傷は完全に消えていませんが、一段濃い色合いになったため施工前よりは目立たなくなり、酷くえぐれていた箇所のパテ埋めも想像していたよりは上手く出来ました。
チッピング箇所もこのとおり。
時間と手間はかなりかかりますが、作業内容の約6〜7割は乾燥にかける時間で、作業自体は特に難しいものではありませんでした。
今回得た知見はビンテージスピーカーエンクロージャーのリペアにも活かせるはずなので、いずれJBL L26もキレイにしてやろうと思います。