ないなら作ればいい?TNT FleXy Tableっぽいオーディオラックを自作してみた

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今回はオーディオラックを自作してみました。

欲しいサイズのラックが売ってない!

筆者が探していたサイズはW:900×D400×H345mm、棚2段でキャスター付き。
ハヤミ工産のHAMILeX、アイシン高丘のTAOC、朝日木材加工のADKティグロンQuadraspireなどなど、世にオーディオラックは数あれど、筆者宅で使えそうなサイズは皆無。
ルミナスラックもこのサイズでキャスターを付けると高さをオーバーしてしまいます。
「ないならば、作ってしまえ」と思うこと早数年、McIntoshのウッドケースを上手くリペア出来たおかげで気分もアガり、ようやく重い腰を上げて取り掛かることができました。

目指したのはプリアンプへのアクセスのし易さ

そもそも、なぜそんなサイズの棚が欲しいのかと言うと、筆者のオーディオルームがちょっと変わった形なのが理由です。
部屋の中で最も幅を稼げるのはスピーカーを置いた天板ですが、板厚20mmしかないためたわみやすく、Thorens TD520を載せるのが精一杯。 それ以外はDJテーブル下しかありません。
ここにすっぽり収まるような作りにしたかったため、背の低いタイプにせざるを得ないのです。

自作オーディオラック導入前のオーディオルーム

↑これが自作オーディオラック導入前のオーディオルーム。
上下左右に機材が点在して配線チェックが面倒、特にプリアンプへのアクセスが最悪で接続も一苦労でした。

自作オーディオラック導入後のオーディオルーム予想図

↑これが自作オーディオラック導入後の予想図。
DJテーブル下にメイン機材を収めてプリアンプへのアクセスを容易にし、MC30も横並びにしてカッコよくしたい!のです。

低価格で自作できるオーディオラック、TNT FleXy Table

真空管アンプキットのようにオーディオラックキットなどというものはありませんし、ゼロから全て作れるほど筆者には木工のスキルもありません。
で、調べてみると海外のTNT FleXy Tableというサイトがヒット。 こちらは非常に古くからあるサイトのようで、先人達の事例も多数見つかります。
ちなみにWayback Machineで見ると、TNT FleXy Tableは1999年2月下旬頃に初公開されてから現在まで内容がほとんど変わっていないという、ある意味希少なサイトです。

さて、TNT FleXy Tableとは以下のように説明されています。

the TNT FleXy table uses a principle which is slightly different from the one that is commonly used for other audiophile racks: while these are pretty rigid the FleXy (hence its name) is built in a way that vibrations coming from the outside world (loudspeakers etc.) are damped while passing through the rack structure itself. TNT FleXyテーブルは、他のオーディオファイルラックで一般的に使用されているものとは若干異なる原理を使用しています。これらのラックがかなり強固であるのに対し、FleXyは、スピーカーなどから来る振動がラック構造自体を通過する間に減衰するように構築されています。

そしてこのラックの最大の利点は低価格で作れること。
必要な材料は以下の通り。

  • 棚板
  • ナット(棚板数×6個)
  • ワッシャー(棚板数×6個)
  • ゴムワッシャー(棚板数×6個)
  • 全ねじ(ビス全体にネジが切ってあるもの)ボルト(3本)

入手もしやすそうです。
これなら行ける!と思い、今回の制作に至りました。

公式では全ねじボルトはM18(ネジ径18mmのこと)、棚板は20mm厚のMDFで600×400mmを基本とし、できれば縦横比は黄金比率(1:1.618)にすべしと書かれています。
900×400mmを必要とする筆者は、M16の全ねじボルト4本、棚板は25mm厚の集成材にすることで強度を確保することとしました。
ちなみにM18ではなくM16にしたのは、全ねじボルトや袋ナット、ナット、ワッシャー類が高い上に入手性が低かったためです。(これらのパーツは当然ながら、ねじ径が大きくなるほど高価になります)

また、棚裏には制振塗料を塗れとありましたが、紹介されているメーカーの商品は製造中止になっているようで入手不可、代替品もそこそこのお値段でしたので、これは端折ることにしました。

必要な材料

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改めて必要な材料を整理します。
前述の通り、筆者は公式とは異なるM16全ねじボルト4本仕様のため、ナットとワッシャー類は棚板数×8個としています。
※表示価格は筆者購入時のもの。

材料 個数 単価 小計

棚板(ゴム集成材/W900×D400×T25)

※加工費込
@マルトクショップ
2 5550 11100

全ねじボルト(M16×340)

@モノタロウ
4 569 2276

袋ナット(M16)

@モノタロウ
4 169 676

ナット(M16/12個入)

@Amazon
1 482 482

ワッシャー(M16/10個入)

@モノタロウ
2 249 498

ゴムワッシャー(M16/7個入)

@モノタロウ
3 409 1227

キャスター(ストッパー付き)

@モノタロウ
4 149 596
M5 タッピングネジ(35本入)
※キャスター固定用
@Amazon
1 524 524

合計金額は¥12,379でした。
棚板をMDFにすると余裕で1万以内に収まると思います。

棚板はゴム集成材に決定

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棚板は以前も利用したことがあるマルトクショップで発注。
強度を優先するとウォールナットやナラも選択肢に入りますが、どちらも単価が非常に高いので諦めました。
最終的に強度と重量があり、比較的単価が安いゴム集成材を購入しました。
ゴム集成材は同社サイトでは以下のように説明されています。

まさしくゴムの樹液を取る木材です。昔はゴムの樹液をとった後、捨てられていた木ですが、このように集成材として使われることでもう一度命を吹き込まれた木です。白くてきれいな木です。

棚板のオプション加工

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オプション加工は穴あけと糸面(木口、木端を磨いた後、サンドペーパーで軽く角を落とすこと)+磨き(木口、木端のカット跡だけを磨いて綺麗にすること)にしました。

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ゴム集成材はかなり硬く、板厚が25mmもあるため、素人が下手に穴あけすると割れる危険性があると考え、最初から自分でやるつもりはありませんでした。
糸面と磨きは自分でやれそうな気もしますが、美しい仕上がりを見るとこれも頼んでよかったと思いました。

棚板の塗装

組み立て前に塗装を行いました。
今回ももちろんワトコオイル(エボニー)です。

塗装方法・回数は前回書いたMcIntoshのウッドケースと同じく全5回。 今回はリペアではないので、マスキングと傷埋め、サンディングは省略して以下のようにしました。

  • オイル塗装(1回目)・拭き取り・乾燥(1時間)
  • オイル塗装(2回目)・水研ぎ(耐水ペーパー #240)・拭き取り・乾燥(24時間)
  • オイル塗装(3回目)・水研ぎ(耐水ペーパー #240)・拭き取り・乾燥(24時間)
  • オイル塗装(4回目)・水研ぎ(耐水ペーパー #320)・拭き取り・乾燥(24時間)
  • オイル塗装(5回目)・水研ぎ(スチールウール #000)・拭き取り・乾燥(24時間)
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塗装後の棚板がこちら。
当初の白木とはまるで雰囲気が異なるラスティックな仕上がりで、ビンテージオーディオとの相性も良さそうです。

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こちらが機材を載せてみたところ。
ラスティックな雰囲気の塗装と全ねじボルトや袋ナットなどの無骨さがめちゃくちゃマッチしています。

完成

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完成したTNT FleXy Tableっぽいラックがこちら。

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上部のクリアランスは約1cmでギリギリですが、目的だったDJテーブル下にもちゃんと収まります。

反省点

製作の途中、全ねじボルトにナットがなかなか入っていかないことや、途中で回らなくなることがよくありました。
ペンチで無理やり回していたのですが、モンキーレンチなども用意しておいた方が良かったなと思いました。

それから、全ねじボルトのネジ山が所々潰れていることもありました。
こういった箇所にはネジ山を回復させるためにネジヤスリでヤスってやると良いでしょう。

まとめ

今回は欲しいサイズの既製品が皆無だったことが自作の発端でした。
結果的に目的を果たすことが出来、価格も仕上がりにも満足行く物になり、手間をかけた甲斐があったというものです。

なるべく手間をかけたくない方は塗装や制振塗料を端折り、20mm厚のMDF材でW600×H400mmを基本としたサイズで制作するのが良いでしょうね。

ちなみに自作ラックにしたことにより、音質が悪くなったとか良くなったとかの変化は全くありませんでした。