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Volumio用リニア電源の自作、いよいよ制作編です。(必要な工具、パーツ等は準備編をご覧ください)
※お約束ですが、本記事をもとにして事故や怪我をしても筆者は一切の責任を負いません。
大容量出力可変安定化電源キットの制作
秋月の電源キットは小さくても大容量電流に対応
秋月電子通商の大容量出力可変安定化電源キットは名刺サイズでパーツも少なく非常にコンパクトにまとまったキットです。
出力電圧はDC1.2V~20V(入力電源は出力+3V以上が必要)、電流は最大5A(放熱の制約により変わる)。5Aもの大容量に対応した電源キットはこれしかないんじゃないでしょうか。
準備編で書いたとおり、筆者は電解コンデンサーをニチコンのオーディオ用に換装しています。と言っても3個でたったの¥180ですが😉
基板実装
このキットは簡単な説明書が付属している上、パーツ数も少ないため迷うことはまずないと思います。
今回は5Vの電圧が欲しいため基板上のRVが0Ω、つまりショートさせます。
ショートピンにはパーツを取り付け時に切ったリード線(足)を流用します。
電子クラブで使われていたのと同じショットキーバリアダイオードブリッジ(60V15A D15XBS6)を使用しますが、そのままではリード線の間隔が広すぎて基板に入りません。ペンチでリード線を少し曲げて間隔を狭くする必要があります。
ショットキーバリアダイオードブリッジのリード線は基板のホール径ギリギリですので、やや強引に入れて通します。
三端子レギュレータの放熱対策
問題は三端子レギュレータの放熱対策です。
筆者は放熱器ではなく、ケース底面に直付けするつもりなのでリード線を延長してS字に曲げ、シリコンガラスチューブでカバーしてショート対策をしました。
なお、取り付け時はケースと三端子レギュレータの間に付属の絶縁用シートをはさみ、ナイロンネジとナイロンナットで固定します。
完成
トランス、ヒューズボックス、トグルスイッチ、IECインレットを繋いでとりあえずはバラックで完成。このキットはパーツが少ないので1時間もあれば余裕で完成してしまいます。
【注意】
写真の配線材の剥き出し箇所が長く、このままではショートの危険性があります。剥き出し箇所は極力短くし、熱収縮チューブや端子スリーブで端子ごと覆って絶縁しましょう。
電圧チェック
電源を入れて出力電圧をチェックします。DC 5.18Vを表示しているのが分かります。
出力電圧の調整は基板上の半固定抵抗をドライバーで回して行います。
※調整時はドライバーが他のパーツに触れてショートしないよう十分注意しましょう。
USB Type-C ⇔ DCケーブルの自作
ないなら作ってしまえ
リニア電源の出力は汎用性のあるパネル取り付けDCジャックにしたのですが、短めのUSB Type-C ⇔ DCケーブルはほとんど見かけないため自作しました。自作はケーブルを任意の長さに出来るのが良いですね👍
※Raspberry Pi 4の給電はUSB Type-Cですが、Raspberry Pi 3まではUSB micro Bです。プラグの形状を間違えないよう注意してください。
既製品ケーブルを切ってプラグをハンダ付け
秋月電子通商で購入したUSB2.0 TypeAオス⇔TypeCオス 1.5mをType-C側から50cmで切り落として被覆を剥き、2.1mm標準DCプラグをハンダ付けしました。
USBケーブルの仕様はPDFで公開されています。このケーブルアサインを参考にして、DCプラグをハンダ付けします。剥いたケーブルの赤をホット、黒をコールド、信号線D+とD-の白と緑(実際は白と黄でしたが)はショートさせて熱収縮チューブで覆っています。
ケーシング
ケースの選定と取り付け位置をシミュレーション
電子クラブでも書かれている通り、三端子レギュレータの放熱が大きいことは事前に把握していましたので、ケースは放熱を重視し、タカチ電機工業のMBH型放熱穴付アルミケース MBH12-10-16に目星をつけました。
ケース購入前にダンボールを実寸サイズにカットして取り付け位置をシミュレーションします。
シミュレーションでサイズも取り付け位置も問題なしと判断してからケースを購入。
タカチ電機工業のMBH型放熱穴付アルミケース MBH12-10-16は上下に放熱穴があるため、空気の自然対流も期待できそうです。
穴あけ前に図面を起こす
実際の穴あけ前に図面を起こします。
Adobe Illustratorで実寸サイズの図面を描きます。
今回は放熱穴があるため、そこを避けるように穴配置をします。
開ける穴の真ん中に点も書いておくとポンチを打つのが楽です。
プリントアウト後、カットした図面をメンディングテープでケースに貼り付けて最終確認をします。
穴あけ
いよいよ穴あけです。図面を貼ったままドリルやニブリングツールで穴を開けていきます。
MBH12-10-16の素材はアルミ、板厚は1mmしかないのでドリルで簡単に穴が開きます。
穴あけは以下のような手順で進めます。
- ドリルが滑らないようセンターポンチでマーキング
- 大きい穴は先に小さめの下穴(3mm程度)を開ける
- ステップドリルで穴を拡大する
- テーパーリーマーで微調整する
- バリ取り工具と棒ヤスリで仕上げる
IECインレットのような角型の穴は以下の手順で進めます。
- ドリルが滑らないようセンターポンチでマーキング
- ドリルで3mm程度の下穴を開け、ステップドリルで10mm程度まで拡大する
- 開けた穴にニブリングツールを差し込み、角型に切っていく
- 棒ヤスリで微調整とバリ取りをして仕上げる
改めて電圧と温度をチェック
ケースに収めた後、改めて電圧と温度をチェックします。
Volumioを起動して30分後、三端子レギュレータ付近のケース温度を計測。
39〜45℃程度(室温26℃)ですので問題ないでしょう。
Plugable USB-C 電圧・電流チェッカーで起動時の電流も計測してみました。
電流は最大で1.07A、起動後は0.72A、トラックのロード時は0.75A程度でした。
完成
完成したのがこちら。なかなかの出来栄えです。
トランスやIECインレットの配線は出来る限り熱収縮チューブや絶縁スリーブなどで絶縁しました。
そして当たり前ですが元のスイッチング電源アダプターと比べると大きさや重量がかなりあります。
スイッチング電源アダプターの重量が83gなのに対して…
リニア電源は1.53kgと約18.4倍です。
更にコンパクトなケースで小型化は可能かもしれませんが、三端子レギュレータの放熱を考えると大きめの放熱器を付けるか、放熱穴付きやヒートシンク付きケースを選ばるを得ません。
※ケーシングのシミュレーション時に何の放熱対策もせずに起動を試みたところ、三端子レギュレータが熱暴走したらしくRaspberry Piはまともに動きませんでした。その際、三端子レギュレータ本体の温度を計測したところ90〜100℃にも達していました😅
まとめ:自作可能な方は試す価値は絶対あり
準備編の冒頭でも書いたとおり、リニア電源の効果は絶大で、音場と音像がより一層増しました。 以前のスイッチング電源にはもう戻れないです。
工具等をお持ちで自作が出来る方は是非試して、この絶大な効果を体験して頂きたいです。
I2S DACよりコストをかけてでもリニア電源にしておく方が絶対良いです。
おまけ:ファインメットビーズをつけてみた
今回の制作の過程で初めて知ったファインメットビーズというアイテムをつけてみました。
ファインメットビーズは高性能EMC・ノイズ対策部品(サージアブソーバコア)です。
筆者はNFJストア ヤフーショッピング店で¥490/5個(送料別)で購入しました。 ちなみにファインメットは日立の製品ですが、類似品のアモビーズは東芝の製品です。
アモビーズ:「アモビーズ」はその優れた可飽和特性によってダイオードのリバースリカバリ電流を抑制し、発生していたノイズを低減します。
EMC:EMC(Electromagnetic Compatibility)とは、電磁両立性のことで、電子機器などが備える、EMI(Electromagnetic Interference)電磁的な不干渉性(他の機器の動作を阻害したり人体に影響を与えない)およびEMS(Electromagnetic Susceptibility)耐性(他の機器などから発生する電磁波などにより阻害されない)これらのことです。(OKIエンジニアリング)
「電源ラインに使用すると良い結果が得られる」とのことで、DCジャックに繋がるケーブルに装着しました。
結果は…うーん、あまり変わっていないような😅
使用する箇所を三端子レギュレータやショットキーバリアダイオードブリッジに変えてみるなど試行錯誤の必要がありそうですが、リニア電源自体の効果に大満足してしまったので、今回はこれで終了します。
秋月電子通商にもアモビーズが3種類ほどあり、1個¥35〜80程度です。この手のアイテムとしては格安なので興味のある方は試してみてください。
※筆者が購入したファインメットビーズは内径φ1.3mmしかないので、取付対象パーツの外径を必ず確認しておきましょう。