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めっきりラズパイオーディオ関連記事が少なくなってしまいましたが、Volumio用リニア電源を自作してみたので久々に書いてみます。
※お約束ですが、本記事をもとにして事故や怪我をしても筆者は一切の責任を負いません。
結論:効果絶大
寝室用のVolumioをインストールしたRaspberry Pi 4Bの電源として使用してみたところ、一聴して分かるほど良くなりました。
寝室用システムの電源周辺対策は特に何もしていない分、効果がわかりやすかったのかも知れません。(筆者の使用システム詳細はこちら)
Raspberry PiのI2S DACはそこいらのDACでは遠く及ばないほどのキレの良さがありますが、リニア電源にすると音場と音像がより一層増しました。
予想以上に効果は絶大で、全Volumioユーザーにオススメしたいアイテムです。
メリットとデメリットをよく考えよう
リニア電源制作によるメリットは音質の向上、これに尽きます。
デメリットは筐体が大きいため場所を取ることと、コストがかかることです。
自作は工具やパーツを揃える必要がある上、多少の知識も必要です。(必要な工具やパーツは後述します)
リニア電源制作のためだけに工具一式まで揃えるとコスパは非常に悪いと言えます。
逆に既に工具を持っている方は是非とも試して頂きたいです。
ちなみにかかった費用は約7千円(送料・工具代を除く)、作業時間は約半日でした。
真空管アンプキットを制作できる方なら難易度はかなり低いと思います。
交流、直流とその理由
リニア電源の説明の前に交流と直流について触れておきましょう。
(画像は関西電力より引用)
日本の家庭用コンセントは交流(Alternating Current = AC)の100Vです。
これをRaspberry Piのような電子機器に用いる場合、安定化した直流(Direct Current = DC)にする必要があります。
だったら最初から直流にしてくれよ!と思うことでしょう。
家庭に送られる電気が交流の理由はNHK高校講座 物理基礎に詳しく書かれています。
発電所から家庭に送られる電気は交流である。それはなぜだろうか。
同じ電力を送るとき,「電圧を低く,電流を大きく」すると,「電圧を高く,電流を小さく」するときと比べて,送電線での発熱が大きい。つまりロスが大きい。それを避けるため,発電所からは数十万Vという高電圧で電流を送り出し,消費地に近づくにつれ,いくつかの変圧器で電圧を下げていく。
交流の方が発電所からの送電時にロスが少なく済むわけですね。
交流電源を直流電源にする方法は大きく分けて二つ
交流電源を直流安定化する方法はスイッチング方式とトランス方式(リニア電源)の二つがあります。
スイッチング方式とは
Raspberry Pi 4には通常、スイッチング電源アダプターを介して電源(DC 5V)を供給します。
スイッチング電源はWikipediaでは以下のように説明されています。
スイッチングトランジスタなどを用い、フィードバック回路によって半導体スイッチ素子のオン・オフ時間比率(デューティ比)をコントロールする事により出力を安定化させる電源装置である。スイッチング式直流安定化電源とも呼ぶ。商用電源の交流を直流電源に変換する電力変換装置などとして広く利用されており、小型、軽量で、電力変換効率も高いものである。一方で、高速にスイッチングを行う事からEMIが発生しやすい。
スイッチング電源はEMI(Electro Magnetic Interference:電波障害)が発生しやすい、つまりノイズの原因にもなるためオーディオマニアには忌み嫌われる存在なのです。
※一方で「適切に設計されたスイッチング電源は、リニア電源よりもはるかにノイズが小さい」と述べるBenchmark Media Systemsのようなオーディオメーカーも存在します。
トランス方式(リニア電源)とは
トランス方式は100Vの交流を一旦トランスによって降圧し、ダイオードブリッジ整流器によって直流に変換します。
「リニア(Linear)」とは「線の」、「直線の」という意味です。
CQ出版ではリニア電源は以下のように説明されています。
入力から負荷に伝達する電力を連続的に制御して,出力電圧を制御するもの.降圧だけに使われ,制御素子での消費電力が大きい.
スイッチング動作ではなく,連続的で直線的なアナログ制御によって動作する電源回路.
大雑把に言うと
- スイッチング電源:安価、小型、電力変換効率が高い、発熱が少ない、ノイズが多い
- リニア電源:前者より高価、大型、電力変換効率が低い、発熱が多い、ノイズが少ない
という感じです。更に詳しい説明はTechWebが分かりやすいです。
リニア電源の制作準備
Raspberry Piのリニア電源は2017年頃にnon-NFB ディスクリート電源基板 DC Arrowという基板単体やパーツセットが販売されていましたが、現在はどこにも在庫がなく入手出来ませんでした。
仕方がなく代替品を探している過程で電子クラブの「Raspberry Piのアナログ電源をキットで作る」を見つけて真似してみることにしました。
必要な工具
制作には工具が必須です。
筆者が使用した主な工具は以下の通りです。
- ハンダごて
- ハンダ
- コテ台
- ニッパー
- ラジオペンチ
- ケーブルストリッパー(配線材の被覆を剥くためのもの)
- テスター
- 耐熱・絶縁マット
- ドリル(ケースの穴あけ用)
- ステップドリル(ドリルの下穴を広げるためのもの)
- センターポンチ(金属板の穴開け時にドリルが滑らないようマーキングするためのもの)
- テーパーリーマー(穴を広げて微調整するためのもの)
- ニブリングツール(金属板を切断するためのもの)
- バリ取り工具(穴あけなど加工した際に出来る突起を取り除くためのもの)
- 棒ヤスリ
- ドライバー
必要なパーツ
大半のパーツは秋月電子通商で買い揃えることが出来ます。
制作は基本的に電子クラブの記事の通りに進めました。
電子クラブと異なる箇所は以下の点です。
- 電解コンデンサ3個をオーディオ用のものに換装
- 出力をパネル取り付けDCジャックに
- USB Type-C ⇔ DCケーブルを自作
- 三端子レギュレータは放熱器を使わずケース直付けに
筆者が購入したパーツは以下の通りです。
※ケースはアマゾン、アースターミナル(必須ではない)はマルツで購入しました。この他、電源コード(2P-3P)、トランス固定用にM3.5〜4程度のビスとナット各2個が必要です。パイロットランプ用LEDには電流制限抵抗が必要です。(筆者は6.8kΩの抵抗を用いました)計算は秋月電子通商サイト内のLEDの抵抗値計算が便利です。LEDに接続する抵抗で明るさは変わります。価格は本記事執筆時点のものです。
品名 | 個数 | 単価 |
---|---|---|
大容量出力可変安定化電源キット LM338T使用 放熱器付 最大5A |
1 | 600 |
貼り付けボス ASR-16 |
4 | 35 |
3Pトグルスイッチ 1回路2接点 |
1 | 80 |
ヒューズホルダー(パネル取付・標準用) MF-524M |
1 | 90 |
ガラス管ヒューズ MF61NR 250V0.5A 32mm |
1 | 30 |
インレット・ノイズフィルター 250V3A RPE-2003 |
1 | 500 |
ショットキーバリアダイオードブリッジ 60V15A D15XBS6 |
1 | 180 |
電源トランス HT-123 |
1 | 1700 |
2.1mm標準DCジャック パネル取付用 MJ-21 |
1 | 120 |
オーディオ用電解コンデンサ 2200μF50V85℃ ニチコンKW |
1 | 160 |
オーディオ用電解コンデンサ 10μF35V85℃ ニチコンMW |
2 | 10 |
USBケーブル USB2.0 TypeAオス⇔TypeCオス 1.5m |
1 | 120 |
2.1mm標準DCプラグ MP121C 内径2.1mm外径5.5mm |
1 | 60 |
3mm青色LED 470nm 70° OSB5YU3Z74A |
1 | 20 |
小型 金属皮膜抵抗 1/4W6.8kΩ (100本入) |
1 | 200 |
耐熱電子ワイヤー 2m×7色 外径1.22mm(UL3265 AWG24) |
1 | 480 |
丸型プラ足(8個入) | 1 | 120 |
タカチ電機工業 MBH型放熱穴付アルミケース MBH12-10-16 |
1 | 2518 |
アースターミナル | 1 | 140 |
ケースについて
筆者は放熱を優先したいため放熱穴付きアルミケースを選びました。
※ケースの選定については制作編で詳しく書いていますが、三端子レギュレータの放熱を考慮する必要があるので、事前によくシミュレーションする必要があります。
面倒な穴あけ作業を避けたい方は共立エレショップの穴あけ加工済み電源コネクタ付クラフトケースキットを選ぶという手もあります。
筆者が購入したEI型トランス(HT-123)は背が高くて入りませんが、背の低いトロイダルトランスに変更してこういったケースに入れるのも良いかも知れません。(ただし、三端子レギュレータの放熱には十分気をつけてください)
トランスの種類と磁束漏れについて
トランスの種類による音質が気になる方はnew_western_elecの「トランスの種類と音質の関係」、トランスの磁束漏れによる影響は同サイトの「トランスの磁束もれ方向」が参考になります。
※筆者は放熱とコンパクトに収めることを優先してケースを選定・制作しており、トランスの種類や磁束漏れは全く考慮していません。(完成後のノイズや唸りはありませんでした)
準備編はここまで。制作編へ続きます。