僕のオーディオ機材変遷(その9・McIntosh MC30購入編)

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JBL L26 Decade、McIntosh C26を購入してすっかりビンテージの虜になってしまいました。

ビンテージへの誘い

ビンテージ崇拝?

McIntosh C26は1960年代後半〜70年代後半に発売、JBL L26 Decadeも1976年発売なので、どちらも同じく約半世紀が経過しています。

「昔のオーディオは物量投入のレベルが今とは比べ物にならないし、今同じことをしたら同じ値段では絶対買えない」 なんて話はよく耳にしました。
ただ、いくら物量投入の時代だったとは言え、小型化・高性能になっているはずの現在の物より昔の物の方が良いなんて理屈で考えて理解出来るはずもありません。

しかし、現実にROTEL RA-1070(2003年頃発売)よりMcIntosh C26(1960年代後半〜70年代後半発売)、最新のハイレゾ対応でワイドレンジな高性能スピーカーよりナローレンジなJBL 4425(1985〜1998年頃発売)やL26 Decade(1976年発売)の方が断然自分好みです。
自分の耳も歳とともに確実にナローレンジ化(劣化)しているはずですが、JBL 4425は10年も前(当時、筆者は30代前半)に購入していまだに使い続けています。
こんなに古い機材なのに、なぜこんなにも自分好みなのかがいまだによく分かりません。
逆にそこが非常に興味を惹く部分でした。

これをビンテージ崇拝と言ってしまうのは大げさかも知れませんが、こうなると新しいものより古いものへの興味が優って行きます。

ビンテージ地獄?

McIntosh C26のアドバイスをくれた知人がふと「ビンテージ地獄」という言葉を呟いていました。
その時は何のことかよく分からなかったのですが、それはこの後で嫌と言うほど体験する事になりました。

オーディオだけじゃないビンテージ崇拝

ところで、ビンテージ崇拝はオーディオに限った話ではありません。
例えばコンデンサ1つとっても、50〜60年代のBumblebeeやBlack Beautyがいまだに高値で取引されています。
これはオーディオマニア以外にもギタリスト達からの需要もあるからです。
これらのビンテージコンデンサをギターに実際に組み込んで比較した記事があります。

コンデンサを交換するとギターの音はどう変わるのか? コンデンサを交換するとギターの音はどう変わるのか?

結論として「コンデンサでギターの音はほどほどに変わる」と締めているあたり、実に正直だなあと思いました。
個人的にも真空管アンプ自作キットを改造した経験から、コンデンサを変えることで確かに音は変わるものの、コスパを考えると「どうなんだろ?」と疑問に思っています。

McIntosh MC240とMcIntosh MC30

McIntosh MC240 vs. McIntosh MC30
(画像はhifiengine.comより引用)

話を戻します。
McIntosh C26購入後、ビンテージの魅力に取り憑かれ、パワーアンプもビンテージ物を聴いてみたいと思いはじめました。
どうせならMcIntoshのブルーアイズ、そしてC26と同年代のMC2105あたりを、と思いつつ、Thorens TD520を購入したショップに連絡してみると「McIntosh MC240とMcIntosh MC30がちょうど今あります」とのこと。
何というタイミング!この際ブルーアイズはどうでもいいや、すぐに試聴予約してMcIntosh C26持参で駆け付けました。

ショップへ到着すると、そこにはMcIntosh MC240とMcIntosh MC30×2台が鎮座していました。
どちらも真空管アンプで出力管も同じ6L6系統、年代の割には外観はまあまあの状態です。

McIntosh MC240の試聴

McIntosh MC240
(画像はhifiengine.comより引用)

まずはMC240から試聴。
大きな3つのトランスに計11本もの真空管群、無骨なノブ類、クロム×ブラックでまとめられた精悍ないで立ちはまるで戦艦のようです。
発売は1960〜69年、重量は約25kg、6L6GCのプッシュプル仕様の40W+40Wでブリッジ接続も可能。
押し出し感はまずまず、ただやや篭った印象でよく言えば紫煙薫るジャズバーのよう、悪く言えばモヤモヤしてスッキリしない感じを受けました。
正直「うーん、この程度かあ」と思ってしまいました。

McIntosh MC240の仕様
項目 詳細
型式 管球式ステレオパワーアンプ
定格出力 Stereo:40W + 40W(8Ω)
Mono:80W(2Ω)
周波数特性 16Hz〜40kHz
全高調波歪率 0.5%
入力感度 0.5V
SN比 90dB
消費電力 270W(定格出力時)
インピーダンス 4Ω / 8Ω / 16Ω
使用真空管 4 x 6L6GC
3 x 12AX7
2 x 12AU7
2 x 12BH7
サイズ 43.8 x 27.3 x 20.3cm
重量 約25.4kg
仕上げ クロム x ブラック

McIntosh MC30の試聴

McIntosh MC30
(画像はhifiengine.comより引用)

続いてMC30。
こちらもクロム×ブラック仕上げで、MC240より更に直線的なデザインですが無骨さは変わらず。
2つのトランスの間に挟み込まれた出力管やシルバーのブロックコンデンサが印象的です。
1954〜62年頃の発売でMC240よりも古く、モノラル、出力管は1614(6L6)、30W。

出力だけ見るとMC240よりMC30の方が低いはずなのに、あまりにも強烈なストレートパンチを喰らった印象。分かり易い陰陽、彫の深い輪郭、スッキリした音。これがモノラルの力強さか。。。聞き終えた後、同行した知人と同時に顔を見合わせたほどでした。
この一瞬でMC30に決まりました。

McIntosh MC30の仕様
項目 詳細
型式 管球式モノラルパワーアンプ
定格出力 30W(8Ω)
周波数特性 20Hz〜30kHz
全高調波歪率 0.3%
ダンピングファクター 12
入力感度 0.5V
SN比 90dB
消費電力 135W(定格出力時)
インピーダンス 4Ω / 8Ω / 16Ω
使用真空管 2 x 1614(6L6GC)
2 x 12AX7
1 x 12AU7
1 x 12BH7
1 x 5U4GA
サイズ 33 x 20.3 x 20.3cm
重量 約13.8kg
仕上げ クロム x ブラック
McIntosh MC30にはMC30Aと、MC30をキット化したMK30というモデルも存在していました。MC30Aはヴァリアブルダンピング回路付き、MK30は1960〜61年の2年間しか販売されていないかなりレアな商品です。MK30の回路はMC30と同一でシャーシについた銘板がMcIntoshではなく「MacKit 30」となっています。

McIntosh MC30購入

McIntosh MC30
McIntosh MC240との圧倒的な差、今まで聴いたことがないほどの押し出し感はドン・フライの豪快なストレートパンチのよう。
一発でノックアウトされ購入を決意しました。

McIntosh MC30は、この時点で自分が購入したオーディオ機材の中で最も高価でした。
すぐに出せる金額でもないため金銭の工面と設置場所の確保も必要です。
そこで出番の少なくなっていたROTEL RA-1070、JBL/UREI 6260、Thorens TD318MKIIIを手放すことにしました。いずれも10年以上、TD318MKIIIは20年の長き年月を共にしてきた相棒でしたので、少々寂しくもありましたが背に腹はかえられません。
その他、エレキットTU-8100、YAMAHAのフォノイコライザー、DJ用に購入したカートリッジ類、サブ用DJミキサーなどなど、かなり多くの物を売却して購入費に充てました。

またもや返品か?

購入費を捻出し、店頭でMcIntosh MC30を受け取って帰宅。
翌日セッティングして電源投入、いよいよ音出しです。
しかし片方のユニットから「ブゥーーーン」というハムノイズが絶え間なく出ています。
「なんで???」
店頭で試聴した際には問題なかったはずなのに、なぜ今ノイズが?
意味が分かりませんでした。

運搬時に真空管がいかれたかと思い、全換装してみても同じ。
コンデンサの容量抜けを疑い、シャーシを開けて目視チェックしてみても特に異常なし。
なんも分からん。。。
何台か真空管アンプ自作キットを制作したとは言え、所詮はビギナーです。自分の技量の低さを痛感しました。

これ以上自分ではどうにもならないので、返品も視野に入れつつ、ノイズが出ているさまを動画で撮影しショップへ連絡、現状を説明しました。

トラブルを乗り超えて

後日、ショップから連絡があり「メンテナンス担当を連れて行くので問題のユニットを拝見させてほしい」とのこと。こちらとしては断る理由はありません。

迎えた当日、メンテナンス担当者がユニットをチェック。
「ボリューム周りに問題がありそう」
すぐに問題箇所の目星をつけるとはさすがプロ。
シャーシを開けてテスターで配線チェックしていくと「これだ!」と。
どうやらボリュームポットのアースが繋がっていなかったようです。
出品前のメンテナンス時にハンダしたつもりが見落としていたとのこと。
店頭ではたまたま問題なく接触していたのが、運搬時にズレたのか、自宅ではアースが繋がっていない状態でノイズが出ていた模様。
すぐにハンダ付けして再度チェックすると今度は全くノイズもなく音も正常です。

「良かった。。。」

「返品も受け付けますがどうしますか?」と言われましたが、このまま頂くことにしました。

「そんな単純なミスをするなんて信用できない!」と思う方もいるでしょうが、僕としては半分骨董品を買った気持ちでいますので、そこまで目くじらを立てる気もなく、むしろ治せるレベルで良かったと胸を撫で下ろしました。
気長に構えていなくてはオーディオなんてやってられません。

JBL 4425 meets McIntosh MC30

JBL 4425の本領発揮

さて、気を取り直して改めてリスニングです。
当時の組み合わせは以下の通り。

  • スピーカー:JBL 4425 / JBL L26 Decade
  • プリアンプ:McIntosh C26
  • パワーアンプ:McIntosh MC30×2台

JBL 4425はこれまでにも無数の組み合わせを試してきましたが、MC30が入ったことでまるで違うスピーカーのように生き生きと音を奏でるようになりました。
ショップ店頭で聴いた時と同じく強烈なストレートパンチがバシバシ飛んできます。
モノラルが故に音の分離も分かりやすく、後味もスッキリ、それでいて粒立ちもしっかりしています。
今まで聴いていた4425は全力ではなかったのか?と思うほどの違いです。

4425を購入して10年、これで「鳴らしきった」と胸を張って言えるようになりました。

一方、MC30とL26との相性は悪くないものの、少し元気が良すぎるように思えました。
L26はC26とSUNVALLEY SV-P1616D(多極管仕様)の組み合わせの方が自分好みです。