タムラと日本光電のトランスでオーディオ用昇圧トランスを自作してみた

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以前書いたフォノイコライザー「AT-PEQ20」を改造してみたは、かなりの人気記事になりました。
改造に興味のある方が多いのは意外でした。
今日はオーディオ用の昇圧トランスを自作した経験について書いてみます。

音は変わるの?

オーディオ用昇圧トランス

いつものように先に結論です。
接続するプリアンプにもよりますが音は確かに変わります。

今回はタムラ(TK-131)と日本光電(TF-3WL)の2機種ですが、自分の好みはTK-131でした。
TK-131は大人しい印象ですが細やかな粒立ちでシルキー、全体的にナチュラルなまま少し艶と奥行きを与えてくれるような感じです。
TF-3WLは反対に立体的。タムラよりもメリハリと奥行きがあり、重心は低くギラッとして時折高音が耳に障ることがありました。

オーディオ用昇圧トランス

ケーシングしても手のひらに収まるようなサイズ、しかも電源を必要としないのに変わるんだなあと、少し不思議な気分になります。

昇圧トランスとは

フォノイコライザー(ヘッドアンプとも言う)はレコードやカートリッジの微細な音声信号を大きくするための機械です。
昇圧トランスもフォノイコライザーと目的は同じですが、その名の通り変圧器(トランス)を使って音声信号を大きくするものですが、フォノイコライザーのように電源を必要としません。

現在も様々なメーカーから多種多様なトランスが発売されいて、音色や目的(MC用、MM用、CDなどのライン用)に合わせて導入することが出来ます。
ただし、トランス単体で発売されているものは自分でケーシングやパーツ、線材、はんだ付けも必要です。
「色々面倒くさいなー」と思った方はOrtofon ST-M25などの既製品MCトランスをサクッと買うのも手です。

昇圧トランス:MCカートリッジからの電気信号をトランス(変圧器)を使って昇圧させる機器を昇圧トランス(MCトランス)と呼びます。 コイルの巻数比を利用して電圧を上げるため、電源不要で力強い音質となります。
ヘッドアンプ:MCカートリッジからの電気信号をトランジスタを使って昇圧させる機器をヘッドアンプと呼びます。電源が必要ですが、フラットでレンジの広い音質となります。(オーディオテクニカ カートリッジナビ アナログを識る3より引用)

自作難度はやや低め

オーディオ用昇圧トランス

電源が不要なため自作難度はやや低めです。
ハンダ付けの箇所も多くありませんし、パーツも1台につきRCAジャック4個とアースターミナル1個だけです。

パーツとケースはマルツで揃えました。参考までにリストアップしておきます。(2台分です)

オーディオ用昇圧トランスパーツリスト(2台分)
品名 単価 個数
アルミダイキャストボックス TD9124N 790 1
アルミダイキャストボックス TD7103N 670 1
アースターミナル T-10 240 2
RCAジャック RJ-2000B-T/R(赤・10φ用) 260 4
RCAジャック RJ-2000B-T/W(白・10φ用) 260 4

最大のネックはケーシング

最大のネックはケーシングです。
自分はタカチのアルミダイキャストボックスTD9124NTD7103Nを使用しました。
どちらも1000円以下でとても安いのですが、素人がこれを加工するのは容易ではありません。特にアルミダイキャストは粘度があり硬さが均一ではないため余計に難しいそうです。(側面に穴を開ける場合、タカチのケースは側面に傾斜が付いていることも難易度アップの原因です)

当初、工具を揃えて挑もうと思いましたが、多数の工具が必要な上、ダイキャストに正確に穴を開けることが非常に難しいと知りあきらめました。
製造元のタカチではケース加工も受け付けているので、見積もりをお願いしたところ1個1万以上。。。結局、金属加工業を営む知人に加工をお願いしました。

CAD図

こういう場合、先方にCAD図を渡して指示するのが一般的ですが、これも素人にはハードル高いですよね。。。
幸い自分はAdobe IllustratorCADtoolsを使用したことがあるので何とかクリア出来ましたが、指定ミスで何度か突き返されました😅

合計の費用は?

パーツ代が¥4,020、ケース加工代が¥10,000(2台分)、トランスはTK-131が¥9,250(2個)、TF-3WLが¥5,000(2個)、2台分の合計は¥28,270でした。

昇圧トランスはピンからキリまでありますが、特に有名なのはデンマークのJS(Jorgen Schou)で、余裕で¥100,000以上します。
それに比べれば安いもんですが、上を見ればキリがないですね。。。

味付けで遊ぶには面白いかも

モニター的な出音や原音再生信者には邪道と言われそうですが、味付けとして遊ぶには面白い機材だと思います。
タムラでも機種が違うと音色も違うと言われていますので、色々と試してみるのも面白そうです。
フォノイコライザーに不満がある方は試す価値アリだと思います。

おまけ

ビンテージには注意が必要

前述のJS以外にもWestern Electric、Altec、Partridge等々、昇圧トランスもビンテージ品が多数あります。
これら全てに共通するわけではありませんが、中にはハムノイズに過敏なものやレンジが非常に狭い傾向のものもあります。
ビンテージに手を出すなら必ず試聴してからにしましょう。

ちなみに筆者が入手したTK-131とTF-3WLはどちらも中古ですがビンテージと言えるほど古くはありませんし、使用する上でノイズやレンジで困ったこともありませんでした。

インピーダンスはあまり重要ではないかも?

今回使用した昇圧トランスのインピーダンス、TK-131は一次側600ΩCT・二次側50KΩ、TF-3WLは一次側200, 600ΩCT・二次側600ΩCTでした。(CTとはセンタータップの意味ですが、CTを使うとインピーダンスが1/4になるようです。まだよく理解出来ていないのでここでは深く触れません)
スペックだけ見ると前者はMC用、後者はMM用トランスのように思えますが、ロー出しハイ受けの原則さえ守っていればインピーダンスはあまり関係ないように思いました。(参考:インピーダンスとは?ロー出しハイ受けって何?【今さら聞けない用語シリーズ】

これは筆者が高出力MCカートリッジ、Denon DL-102(240Ω)とDL-110(160Ω)を使用していることもあります。
カートリッジのインピーダンス値は現行品ならメーカーサイトに必ず掲載されています。ビンテージや生産中止になっているカートリッジの場合はVinyl EngineのCartridge Database(英語)を参考にすると良いでしょう。