僕のオーディオ機材変遷(その5・Thorens TD520購入編)

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自作衝動がひと段落した頃、公私ともにストレスのピークを迎えていました。
昔から買い物でストレス発散をすることが多くあり、抑えきれない買い物欲が。。。

Thorens TD520

ハイマス・ローコンプライアンス対応タンテを求めて

Thorens TD520 この時期は仕事もプライベートもストレス過多で、取り組んでいた仕事が終わったらご褒美に買おうと思っていたものがありました。
それがThorens TD520。
それまでThorens TD318 MKIIIに無理矢理Denon DL-102を装着していたので、ハイマス・ローコンプライアンスなカートリッジ対応のトーンアームとターンテーブルが欲しかったのです。

ハイマス・ローコンプライアンスとは?

ハイマスのマス(Mass)は質量を意味します。
つまりハイマス(High Mass)は「質量のある(=重い)」という意味になります。

コンプライアンス(Compliance)と聞くと、最近は企業の法令遵守を思い浮かべますが、オーディオにおいては感度(カートリッジのカンチレバーにおいては「弾性」)という意味合いになります。
つまりローコンプライアンス(Low Compliance)は「低感度」という意味です。

そしてハイマス・ローコンプライアンスは重量級・低感度カートリッジを指します。
カートリッジ自重30gを超えるOrtofonのSPUシリーズや、僕が持っているDenon DL-102(自重13g)もこれにあたります。(DL-102のコンプライアンス値は公表されていませんが、10×10-6cm/dyne以下と推測されます)
重量級・低感度カートリッジの針圧は3g以上の重針圧推奨のものが多いようです。

一方、逆にローマス・ハイコンプライアンスは軽量級・高感度カートリッジを指し、Shure V15 TypeIII(自重6g)あたりが真っ先に思い浮かびます。
軽量級・高感度カートリッジの針圧は軽針圧推奨のものがほとんどです。

Ortofon.comには5〜10 µm/mNがローコンプライアンス、10〜20µm/mNがミディアムコンプライアンス、35µm/mN以上はハイコンプライアンスと記されています。
しかし35µm/mNを超えるカートリッジは非常に少ないようです。(vinylengine.comに登録されているカートリッジ4443個中、33個のみ)
コンプライアンスを示す単位はmm/N、µm/mN、10-6cm/dyneや単に「cu(compliance unitの略)」とされることもあります。

ハイマス・ローコンプライアンス対応ならロングアーム

Denon DL-102 ハイマス・ローコンプライアンス、かつ重針圧対応のトーンアームとなるとロングアームです。
冒頭に述べたThorens TD520は、ロングアームのSME 3012Rを搭載していたので僕にはちょうどよかったわけです。

一方、ローマス・ハイコンプライアンスで軽針圧の場合はショートアームがよく用いられます。
ロングとショートの特徴についてはオーディオテクニカのサイトに詳しく載っています。

ロングアームはオフセット角を小さくできるためトラッキングエラー(レコードの内側と外側での角度の違いによる誤差)が少なくなりますが、プレーヤー自体のサイズが大きくなります。ショートアームは慣性モーメント(回転に対する抵抗)が低いためアーム自体の動きやバランスの維持がしやすくなります。
audio-technica アナログを識る

TD520はTD318 MKIIIと比べてキャビネットがふた回りくらい大きく、重量も4kg重いので安定感が段違い。
カートリッジが同じでも音質はまるで違います。
ずっしりと沈み込む中低域と少し暗めでも切れ味鋭い高域。
本当のDL-102の音はこれだったのか!と眼から鱗ならぬ、耳から鱗でした。

それにしてもSMEのアームは惚れ惚れするほど美しいです。
それもそのはず、同社のアームはオーディオ好きな設立者その人自身によって作られたのがその始まりです。

スケールモデルから始まったSME

SME 少しSMEの歴史について触れておきましょう。

SMEは英国で1946年に「The Scale Model Equipment Company」として設立。
モデルエンジニアリング業界向けのスケールモデルと部品を製造し、1950年代に航空機計器や事務機器のパーツ製造へと移行。

1959年、同社設立者のAlastair Robertson-Aikmanは自分用としてピックアップアームを製作したところ、オーディオ好きな友人達から大好評になり生産が決定。
最初のモデルSeries Iが週に25個のペースで生産が始まり、社名もそれまでのScale Model Equipmentの頭文字をとり「SME」に変更して現在に至ります。

さらに詳しい歴史は同社Webサイトで公開されています。

好きこそ物の上手なれ。
好きな人が好きなモノを作れば良いモノが出来るという好例ですね。
いまだに昔のアームが高値で取引されているのも頷けます。

トラブルをきっかけにショップと懇意に

話を戻します。
Thorens TD520が届いたその日すぐに開梱してみるとダストカバーにヒビが。。。
クレームを入れるとすぐに電話を頂き、「隣の市なので直接交換パーツをお届けします」とのこと。
まさか交換パーツがあるとは思っていなかったので、これは嬉しい申し出でした。

数日後、ショップの代表者の方が直々に納品に来てくれました。
「システムを見せて頂いてもよろしいですか?」と言われ、「ショボいシステムですがどうぞ」と、少しお話をしてみると代表者の方は近くにお住まいでした。
「機会があれば是非ショップへお越しください」と、お誘いの言葉を頂き、これをきっかけにお付き合いが始まりました。

その6へ続きます。