真空管アンプからノイズが出たので真空管のピン(足)掃除をしてみたら治った話

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いつものようにオーディオで音楽を聞いていると突然「バチッ!!」とノイズが出ることを7月19日にツイートしました。
「今度こそ修理案件か?」
一抹の不安を覚えつつ、このノイズに対して行った対応策を今回は記します。

結論:真空管のピンを掃除したら治った

まずは結論から。
真空管のピンを掃除したら治りました😝
「何だそんなことかよ!」と思うなかれ、この方法はハイファイ堂でも以下のように紹介されています。

この真空管の足だけを空磨きするだけでも効果があります。古い真空管アンプで何年もメンテナンスなどされていないものにノイズが出た場合、この処置だけでノイズがなくなる場合も多いです。<中略>もちろん各々の個体によって様々な不具合の原因がありますので上記のご提案はほんの一例にすぎませんが、僕の経験上この2つはとても有効なことが多いのでご案内しました。

筆者も「そんなんで治るわけないじゃん!」と思いましたが、掃除もほとんどしていなかったのでダメ元でやってみたらビンゴ!でした。
掃除だけで治るのはSUNVALLEYで書かれているようにピンの接触不良と酸化皮膜が理由のようです。(更に詳しい科学的な情報が欲しいところですが検索しても見当たりませんでした)

少々紛らわしいのが真空管自体の不具合でなく偶発的な(あるいは経年による)接触不良です。真空管のピンやソケットはごく長期的に見れば表面に酸化被膜が生成しますし、何かのきっかけでピン/ソケット間の接触が損なわれる可能性も考えられます。逆に言えば昨日まで出ていたノイズが今日消えてしまうこともあり得る訳です。

真空管アンプで同じようなトラブルで悩んでいる方はまず真空管のピンを磨いてみることを強くオススメします。
詳しい方法と使用したお掃除ツールなどは下に書きましたので興味のある方はご覧ください。

やってみたこと

状況を分析する

まずはノイズの状況を冷静に分析してみます。
常時出るノイズではなく、日に2〜3回、ごくたまに片側Chから「バチッ!」と出る瞬間的なものでした。
入力ソースや電源投入後の時間も関係なく、数十分後や数時間後に出ることもありました。いずれも立て続けに複数回出るわけではなく一度だけです。

ラインケーブル、スピーカーケーブルの断線や接触不良もなし。プリアンプ(McIntosh C26)はメンテナンス済み個体ですからコレが原因である可能性は低い。ということは該当Chのパワーアンプ(McIntosh MC30)が怪しいと見当がつきます。
以前経験したMC30のブロックコンデンサの容量抜けの際は、ある日突然ボリューム位置に関係なくノイズが出続け、スピーカーのウーハーが前後に激しく動いていたので電源を落とさざるを得ない状況でしたが、今回はそれほど緊急性が高いとは言えません。

球を疑ってみる

こうした場合、慌ててシャーシを開けても意味がないことが多いので、出来る限り目視でじっくり観察します。

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最も可能性が高そうなのは真空管です。
MC30は6L6×2、12AX7×2、12BH7×1、12AU7×1、5U4GB×1、計7本の真空管が使用されています。目視では出力管、プリ管、整流管のヒーター、ゲッターも異常なし。
先日、真空管アンプの整流管の不具合で右往左往した話で書いたばかりの整流管の故障も考えて、念の為に5U4GBも手配しておきました。

しかし数日後に届いた整流管に差し替えてもノイズが出ました。
ということは整流管の故障でもない、さて困ったぞ…で、Google検索してみたところ冒頭のハイファイ堂の記事に行き着いたわけです。

真空管のピンを掃除してみる

冒頭で書いた通り、真空管のピンを掃除したら治ったわけですが、その手順を詳しく解説します。

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今回使用したお掃除ツールはOPSOLU 端子クリン、無水エタノール、綿棒、エアダスター、マルチクランプです。

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とりあえずエアダスターでシャーシ上のホコリを吹き飛ばします。(もちろんアンプの電源は切ってから使います)

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次に真空管のピンを磨きます。ピン磨きにはOPSOLU 端子クリンとマルチクランプが非常に役に立ちました。

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マルチクランプはハンダ付け用に購入したのですが、クランプ部分がシリコンなので「真空管のピン掃除に使えるんじゃないか?」と思い、試してみると出力管、プリ管、整流管ともに実に程よいフィット感でした。

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マルチクランプで真空管を固定し、端子クリンの樹脂板でゴリゴリと削るように掃除したり、ピンがちょうど入るサイズの円筒形樹脂でグリグリと磨きます。

掃除後は無水エタノールを含ませた綿棒で拭き上げて終了です。 どちらも化学薬品や研磨剤ではないので後々のダメージ皆無、精神衛生上も◎です。

接点復活剤ではなく無水エタノールを使う理由はSUNVALLEYに次のように書かれています。

私どもが使うのは”無水アルコール(エタノール)”です。いわゆるオーディオ的音質改善効果はありませんが確実に汚れが取れますし短時間に乾燥しますのでたいへん好都合です。丁寧に磨くと綿棒が真っ黒になるくらい汚れが取れる場合もあり、特にヴィンテージ球には有効です。なおソケット側は太めの歯間ブラシを使うと便利です。

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上の方法で真空管のピンを掃除して10日以上経過していますが、今の所ノイズの再発はありません。
ハイファイ堂の記事通り、ピン掃除で治ってしまったことにはとても驚いていますが、灯台下暗しとでも言いますか、ビンテージオーディオにはこういうことも大事なんだなあと思い知らされました。

無水エタノール:無水エタノールは、水分をほぼ含まない純度の高いエタノールのこと。洗浄力が高く、あっという間に蒸発する性質を持っていることから、水拭きができない電気製品などの掃除に使われてきました。刺激が強く、肌に直接つくと水分を奪ってしまう性質もあります。アルコール濃度が高いため、消毒力もその分強いように思われがちですが、瞬時に蒸発してしまうため、逆に消毒には向いていません。 (健栄製薬

絶対にやってはいけないこと

トラブル時は藁を掴む気持ちで何でも試したくなりがちですが、やってはいけない🙅‍♂️こともあります。

接点復活剤を使う

接点復活剤は効果があるように思えても数年後に取り返しのつかないことになります。
前述のSUNVALLEYでも以下のように書かれています。

いわゆる接点復活剤は決して使ってはいけません。最終的には残った油分が埃を集めることになりますし、樹脂部分への浸潤によって機械的故障を招く場合もあります。ずっと前のことですが845ソケットに接点復活剤をスプレーしたことで900V以上かかっているプレートと他の電極が通電中にレアショート状態となりアンプが瞬間的に壊れた事例を見たことがあります。

接点復活剤を使う代表的な例はボリュームポットやアッテネーターのガリですね。
名古屋のオーディオショップ、サウンドジュリアのブログでは次のように書かれています。

やってはいけない事として、金属カバーのうろこ状の隙間から、ケイグ等の接点復活剤を噴射してアッテネーターをグリグリ回してガリを取る事です。接点復活剤の溶剤や主成分が、グランド側のグリスを溶かし、一時的に接触が良くなるためですが、グリグリ回すことにより解けて錆を含んだグリスが、アッテネーター全体に流れだし、健全だった巻き線抵抗側にも、全体的に錆とグリスが付着してしまいます。2~3ヶ月で、巻き線抵抗部分も錆が出てしまいまた接点復活剤で直す…。この繰り返しをやったアッテネーターは見るも無残な錆だらけの酷い状態になります。

接点復活剤を万能薬のごとく使っているブログ記事を時々見ますが、数年後に大後悔するのではと思います。
筆者は中古品で「接点復活剤を使ってメンテナンスした」と書かれたものは絶対手を出さないようにしています。

接点復活剤:電気的な開閉器(いわゆるスイッチ)やコネクタ等のうち、特に電子機器のようないわゆる弱電を扱う機器の金属接点の洗浄を目的とした薬剤である。主成分は油と溶剤であり、洗浄と同時に防錆と潤滑を兼ねるが、錆には無力である。(wikipedia

真空管のピンを手で曲げる

真空管のピンとソケットの接触不良によるノイズは確かにあるようです。
特に中古の真空管は接触が緩い場合もあり、ピンを内側に曲げてソケットとの接触を増やすのはよくやることです。

が、ピンを指で曲げることは絶対にやめましょう。
実は筆者はこれをやってしまいました…🤦‍♂️
気づいたら真空管のゲッターがなくなり白化。ピンの根本のガラスにヒビが入り、ソケット付近にはその欠片と思われるものが転がっていました。

これはSUNVALLEY店主・大橋慎氏の「真空管オーディオ活用の奥義」(P183)にも次のように書かれています。

曲がったピンを不用意に手で戻そうとすると、ガラスの部分にクラックが入って空気が侵入してしまう可能性があります。<中略>そうならないようにラジオペンチで全体を挟んで少しずつ曲げていきましょう。

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真空管をダメにした後で同書を読んだので、まさに後の祭りでしたが、同書にはこのような今さら聞けない疑問などもまとめられていて自分のような初心者には非常に有益でした。

トラブルはビンテージオーディオの宿命

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現在、筆者が使用しているオーディオ機材はMcIntosh C26、同MC30をはじめ、生産後半世紀以上を経たものばかりです。

ビンテージオーディオにはトラブルがつきもの、言ってみれば宿命です。
筆者にとってノイズもこれが初めてではありません。
一度目は昨春、McIntosh MC30購入時(僕のオーディオ機材変遷(その9・McIntosh MC30購入編))のハムノイズ、二度目は昨冬、同じくMcIntosh MC30のブロックコンデンサの容量抜けによるノイズ、そして三度目の今回もMcIntosh MC30です。

MC30以外でもトラブルは何度も経験していますが、自分で対応するにも修理に出す際にも状況を分析するのはとても重要です。
皆さんもトラブル時には慌てず状況を分析してから冷静に対応するようにしましょう。

ちなみにトラブルの切り分け方や心得、対処などについて体系的にまとめた「電子工作・自作オーディオ Tips&トラブルシューティング・ブック」が非常に役立ちますよ。