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その昔、DJ御用達カートリッジとして大ヒットしたShure M44Gを改造してみました。
所在なさげなShure M44Gに再び光を!
筆者がDJに興味を持って始めた頃は、Shure M44Gが現行品で入手出来る最後期だったと記憶しています。
一時期、M44Gだけで5本くらい所持していましたが、生産中止になってからは2本のみを手元に残して、Ortofon Concorde Nightclubへ移行、更に2020年末にリリースされたOrtofon VNLへ買い替え(詳しくは「OrtofonのDJ用カートリッジ「VNL」レビュー」を参照)ました。
残った2本のM44Gは所在なさげにカートリッジケースの中で時を過ごすだけとなっていました。
ところが、「stereo」誌ほかで活躍するライターの田中伊佐資氏が何度かShure M44関連の記事を書いてベタ褒めしていたため、筆者も気になりはじめて今回の改造に至ったわけです。
その記事が収録されたのが「やっぱレコードもろオモロい: ヴィニジャンが知りたかった山ほどのこと」。
M44を改造しまくって比較した記事「M44-7人の侍」ではM44ほかM91やV15にM44用スタイラスを取り付けるなどの裏技も。
改造は樹脂製ハウジングを木製ハウジングに換装するだけ
半田ごて不要で難易度も低め
「改造」と文字で表すと大層な印象になりますが、M44Gを覆っている樹脂製のハウジングを外して、木製ハウジングに換装するだけ。
具体的には樹脂製ハウジングとカートリッジの隙間にカッターを差し込んで接着剤を剥がし、ベンジンで接着剤を掃除して、木製ハウジングを接着するというもの。
あっけないほど簡単に終わります。
木製ハウジングは町田市の「木まんま工房木こり」で購入
木製ハウジング、M44G Woodは町田市の「木まんま工房木こり」でオンライン購入出来ます。
悩ましいことに、ハーフボディとフルボディの2種類があり、かつ樹種も欅、黒檀、神代欅、ローズウッド、紫檀の5種類があります。
筆者はハーフボディの欅と黒檀を購入(本記事執筆時、各¥5,000)しました。
木製ハウジングは丁寧な説明書付き
「木まんま工房木こり」の木製ハウジングは丁寧な説明書(画面中程の「ダウンロード」ボタン)が付属するため、特に困ることはないでしょう。
ネジ、ナット、ワッシャー、取り外し用ヘラも付いていました。
事前に用意するのはカッターナイフとベンジン
まずはカートリッジからスタイラスを外しておきます。
樹脂製ハウジングはカートリッジ本体と接着剤でくっついているため、隙間にカッターナイフをこじ入れて剥がします。
筆者はカッターナイフより一回り小さいアートナイフを使いました。
刃が薄いため、狭い場所でも簡単に入るので便利ですよ。
ずいずいっとアートナイフを差し込み、ゴリゴリっと削るような感じで進め、最後はテコの原理でクイッと持ち上げ、木製ハウジングに付属のヘラでカパッと外します。 ちなみに筆者のカートリッジは上部しか接着されていませんでした。
樹脂製ハウジングを取り外した後、カートリッジ本体側に接着剤がついたままでは木製ハウジングが入らない(それだけ精密に作ってある証拠ですね)ため、接着剤を拭い取る必要があります。
これをキレイに拭い取るためにベンジンを用意します。
ベンジンを布や綿棒に染み込ませて、接着剤痕を拭き取った後、木製ハウジングに少量の接着剤を塗ってカートリッジを差し込み、スタイラスを差し込みます。
M44G Woodの試聴比較
比較試聴は以下の条件で行いました。
- ターンテーブル:Technics SL-1200 MK5
- ヘッドシェル:AMERICAN AUDIO TT-HEADSHELL
- シェルリード線:オーディオテクニカ AT6101
- スタイラス:Shure N44G
- 針圧:2.5g
- アンチスケーティング:2.5
※筆者は付属のポリカーボネートワッシャーが入らなかったため、手持ちのステンレスワッシャーを使用しています。
欅
- 比重が軽い(重量約2g)
- 特に高域のヌケがいい
- スピード感やアタックが一際良くなる
- ロックや女性ボーカルものにはうってつけ
黒檀
- 比重が重い(重量約4g)
- 全体的に大人しめな印象
- デフォルトのM44の弱点だった低域のボワ付きが解消されてバランスが取れる
- ドラムやテナーサックスがメインのジャズに向いている
まとめ
2種類に共通して言えるのは「M44って、こんなにバランス良かったっけ?」と思わせてくれる点。
たかがハウジングでこんなに変わるものなのか、と感心しました。
決してM44が別物に化けるようなものではなく、モッサリしてメリハリがないデフォルトの弱点が補われて、より聞きやすくなる印象でした。音離れも良くなりますね。
ただ、向き不向きが一層顕著に現れるため、デフォルトの方が良い場合もあるでしょう。
完全に死蔵品と化していたM44がハウジング換装だけで、こんなに楽しめるとは予想もしませんでした。
同じようにM44を余らせている方、試してみる価値は十分あると思いますよ。