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橋本トランスのHM-7を使って自作MCトランスを作ったので制作記としてまとめます。
なお、これらはなるべく工具を買わず、既に筆者の手元にあるもので完成させることを第一としています。 そのため、多少迂遠な方法であったり、そもそもおかしい場合もあることに注意してください。
※表示価格は本記事執筆時点のものです。
橋本トランス
オーディオマニアにはお馴染みの橋本トランスですが、ご存じない方のためにも概要をざっくり説明します。
橋本電気?橋本トランス?どっちが正式名称?
橋本電気株式会社は、1958年に設立されたトランスの製造・販売を行う企業で、真空管アンプ用トランスの設計と製作に加え、サンスイアンプ用トランスの音質対策のノウハウ、医療機器用トランスのノイズ対策や安全対策に関する技術を蓄積しています。
その集大成として誕生したのが真空管アンプ用トランスシリーズ「ハシモトトランス」です。
当然のことながら社名の「橋本電気」が正式名称ですが、「橋本トランス」の方がよく使われるように思います。
橋本電気のMCトランスは3機種
橋本電気が現在販売しているMCトランスはHM-3、HM-X、HM-7の3機種。 筆者が購入したHM-7はフラッグシップモデルにあたります。
以下、各モデルの比較表を記します。
品名 | 一次インピーダンス | 二次負荷抵抗 | 昇圧比(利得) | 周波数特性 (-1dB) |
挿入損失 | 希望小売価格 | |
定格負荷抵抗 | 推奨負荷抵抗 | ||||||
HM-3 | 一次シリーズ接続 12Ω(7~40Ω) |
4.7KΩ | 47KΩ | 20倍(26dB) | 15〜50kHz (二次負荷抵抗4.7KΩ) |
1.5dB | 31,834 |
一次パラレル接続 3Ω(2~7Ω) |
4.7KΩ | 47KΩ | 40倍(32dB) | ||||
HM-X | 一次シリーズ接続 12Ω(7~40Ω) |
2.7KΩ | 47KΩ | 15倍(23dB) | 15〜100kHz (二次負荷抵抗2.7KΩ) |
1.5dB | 49,126 |
一次パラレル接続 3Ω(2~7Ω) |
2.7KΩ | 47KΩ | 30倍(29dB) | ||||
HM-7 | 一次シリーズ接続 12Ω(7~40Ω) |
2.7KΩ | 47KΩ | 15倍(23dB) | 10〜80kHz (二次負荷抵抗2.7KΩ) |
2.3dB | 60,104 |
一次パラレル接続 3Ω(2~7Ω) |
2.7KΩ | 47KΩ | 30倍(29dB) |
エントリーモデルのHM-3とフラッグシップモデルのHM-7の価格差は約2倍。
大きな違いはHM-7の周波数特性の方が広く、巻線の素材に無酸素銅が使われていることです。
筆者はHM-7しか使ったことがないので音質の比較は出来ませんが、Ex AUDIOの商品説明には以下のようにあります。
HM-3の音質はハイエンドのHM-7のような繊細さはありませんが、HM-7よりもメリハリのある音なので、ハッキリした音が好みの方にはHM-3使用がおすすめです。Ex AUDIO
これはHM-7の昇圧比(利得)が一次シリーズ接続 15倍(23dB)・一次パラレル接続 30倍(29dB)に対して、HM-3のそれは20倍(26dB)と40倍(32dB)であるのが大きな要因かも知れません。
HM-7の購入はBuhinDanaが最安
きたああああ!
— 🔊Audio Beginner (@AudioBeginner) April 9, 2024
橋本トランスのフラッグシップ、HM-7!!!!!!!!!! pic.twitter.com/0j3uxpiwe2
筆者はBtoB卸販売サイト BuhinDanaで購入しましたが、パーツショップ他でも入手出来ます。
※BuhinDanaはBtoB(企業間取引)サイトではありますが、個人事業主でも登録出来ます。登録の際は法人番号も不要のため、実質的に個人でも登録可能です。
以下、入手可能なショップを価格順(昇順)に並べます。
※表示価格は本記事執筆時点のものです。
取扱店 | 価格(税込)/台 |
---|---|
BuhinDana | ¥50,086 |
オーディオウインズ | ¥54,090 |
東栄変成器 | ¥54,100 |
春日無線 | ¥54,640 |
ゼネラルトランス販売 | ¥57,100 |
共立エレショップ | ¥60,104 |
最安値のBuhinDanaと最高値の共立エレショップの差額は約¥10,000ですが、ステレオで使う場合は2台必要なため、最終的な差額も2倍の金額になります。
つまり最大約¥20,000もの差があります。
これはあくまで本記事執筆時点の価格ですので、今後変動する可能性もありますが、事前に複数店で価格を比較することが非常に重要と言えます。
MCトランスのデザインとケースの選定
デザイン
(画像はEx Audioより引用)
自作するにあたり、先人たちや前出のMC-999USのデザインを真似て、ケース、レセプタクルはブラックにします。
インピーダンスが変更できるようツマミをつける予定なので、これをフロントに配置します。ツマミはシャンパンゴールド、真鍮のフロントプレートをつけて、プレートの上には艶消し透明シールでレタリングを施して高級感を出すことにしました。
ケースの選定
ブラックのケースで加工性が良いものとなるとアルミダイキャストです。
アルミダイキャストと言えばタカチのTDシリーズが真っ先に浮かびますが、HM-7を使うには小さすぎます。
タカチ以外のアルミダイキャストはカナダのHammond(ハモンド)社が展開する1590シリーズくらいしかありません。
同社は3D CADデータも公開してくれているので、3D CADソフトのAutodesk Fusion 360を使ってシミュレーションを行いました。
Fusionは非商用プロジェクトであれば無償で使用が可能です。多少の制限はありますが、今回のような単純な3D CAD程度には全く問題ありません。
いくつかの候補の中から1590XBKを選ぶことにし、Fusionでパーツ配置をシミュレート。
最も配線が混雑しそうなロータリースイッチ周りもマージンをキープでき、これならはんだ付けの作業性も大丈夫だろうと予想がつきます。
必要なパーツ
使用したパーツは以下の通りです。
セイデンのロータリースイッチと橋本電気のHM-7は発注から入手までそれぞれ約1週間程度かかりました。
出力はXLRにこだわりましたが、RCAでも勿論問題ありません。
品名 (用途) |
入手先 | 個数 | 小計 |
---|---|---|---|
Hammond 1590XBK アルミダイキャストケース (ケース用) |
RSコンポーネンツ | 1 | ¥2,478 |
Linkman 30X15JXS-7 アルミ製ツマミ シャンパンゴールド 30φ (ツマミ用) |
マルツ | 1 | ¥878 |
タカチ電機工業 AFS20-8B アルミ化粧足 4個入 (インシュレーター用) |
マルツ | 1 | ¥924 |
サンハヤト T-31C 磁気ガード 30×1500mm (電磁波シールド用) |
マルツ | 1 | ¥862 |
大阪魂 41684422 トラス小ねじ 黄銅 M3×8 50本入 (プレート固定用) |
モノタロウ | 1 | ¥409 |
エスコ EA940DP-1 アースターミナル (アース用) |
モノタロウ | 1 | ¥619 |
エーワン 28793 ラベルシール ツヤ消しフィルム 透明 ノーカット (レタリング用) |
Amazon | 1 | ¥1,412 |
エルパ HK-SM06H スズメッキ線 0.6mm 5m (アース配線用) |
Amazon | 1 | ¥216 |
トラスコ中山 Y809-0003 六角ナット ステンレス M3×0.50 20本入 (ビス固定用) |
Amazon | 1 | ¥407 |
トラスコ中山 皿頭小ねじ ステンレス M3×8 20本入 (レセプタクル固定用) |
Amazon | 1 | ¥429 |
岩田製作所 真鍮シムプレート寸法カット品 W50×L50×T0.5 (フロントプレート用) |
Amazon | 1 | ¥266 |
Belden 8503 (内部配線用) |
サウンドハウス | 1〜2m程度 | ¥250 |
NEUTRIK NF2D-B-2 (入力レセプタクル用) |
サウンドハウス | 1 | ¥750 |
NEUTRIK NF2D-B-9 (入力レセプタクル用) |
サウンドハウス | 1 | ¥750 |
NEUTRIK NC3FD-LX-B (出力レセプタクル用) |
サウンドハウス | 2 | ¥1,160 |
セイデン 32048 ロータリースイッチ (2段8回路2‐3接点) (インピーダンス変更用) |
三栄電波 | 1 | ¥10,390 |
橋本電気 HM-7 (MCトランス) |
BuhinDana | 2 | ¥100,173 |
合計で約12.3万円程度になりました。
フラッグシップモデルで完成品を買おうとすると20万程度はしそうですから、約6割程度の出費でしょうか。
準備編はここまで。制作編へ続きます。